次世代に向けた東京老舗テーラーによる機能性登山グッズ製作への挑戦|経営者の声 #1

次世代に向けた東京老舗テーラーによる機能性登山グッズ製作への挑戦|経営者の声 #1

当時「首が太い」「手が長い」といった特徴を持つ私の体に合う既製品スーツやシャツが無く悩んでいました。そんな中出会ったのが、北原氏が経営するTAILOR KITAHARA(テーラーキタハラ)でした。

北原氏は顧客との会話を通じて、自分の体に合ったスーツやシャツを提案してくれるだけでなく、その人の好みや性格に合わせて生地やデザインを選んでくれることから、私もあっという間にファンの一人になりました。気さくな方なので、気軽に訪れることができるのも、お気に入りのポイントです。

そんなTAILOR KITAHARAを運営するノースフィールド株式会社の代表取締役、北原信太郎氏に、今回は展開する事業内容や新たな挑戦について語っていただきました。

本記事は、事業への取り組み方や経営者思想について学べるコンテンツになっています。
 

 Contents

  1. 北原氏とTAILOR KITAHARAの事業内容
  2. テーラー事業の課題について
  3. 新たな事業戦略について
  4. 今後の展望について
  5. 経営者としてのやりがいやマインドセット

1. 北原氏とTAILOR KITAHARAの事業内容

北原氏とTAILOR KITAHARAの事業内容

公式サイト TAILOR KITAHARA

First Reach:
この度はインタビューを快く受けて頂きありがとうございます。まずは簡単に自己紹介と現在の事業内容についてお聞かせください。

北原氏:
ノースフィールド株式会社の代表取締役の北原です。普段は東京豊島区にあるTAILOR KITAHARAで、お客様のオーダーメイドスーツ&シャツの仕立てを行っております。起源は1935年創業の北原洋服店であり、それから数えると3代目になります。

オーダーメイドスーツが出来上がるまでは、1. 接客 2. 採寸 3. 製図・裁断 4. 縫製といったプロセスがありますが、2006年に1. 接客 2. 採寸に特化したノースフィールド株式会社(TAILOR KITAHARAは北原洋服店から移転)を立ち上げました。
 

北原洋服店
 

本気でやるなら自分がやりたいことを

First Reach:
先代の会社があったにもかかわらず、自ら会社を立ち上げたのには何か理由があったのでしょうか?

北原氏:
端的に言えば「どうせ本気で働くなら、自分がやりたいことに取り組みたかったから」だと思います。

話せば長くなるのですが、小さいころから祖父や父親の背中を見ていたこともあり、既に小学校の卒業文集にて「家業を継ぐ」と書いていました。

しかし大学卒業後は、丸紅グループの商社でデジタル関連商品を扱う部署に就職しました。もともと経営者(祖父や父親)の下で育ってきたこともあり、上昇志向が高く、会社で働くとしても幹部候補を目指していました。

そんな中、働いていた会社を知ればしるほど、幹部候補になることは難しいだろうと考えました。

思い立ったが吉日ということで、次はアパレル関連の会社に転職しました。そこでは各地域のドン・キホーテ店が主要顧客でした。

朝四時から棚卸が始まり、商品棚の配置換えは深夜までかかることもあり、帰宅時の運転中に意識が朦朧状態になってしまい、何度も危険な思いをしました。そこで悟ったのが、こんなに死ぬほど働いているなら家業の為に働こうと思ったのがキッカケです。

その後、北原洋服店で働くようになったのですが、父親と事業戦略について意見があわず、それなら自分で起業しようということで、ノースフィールド株式会社(TAILOR KITAHARAは北原洋服店から移転)を立ち上げました。

最終的に自分がやりたい事業で経営者になりたかったということなのでしょう。
 

ノースフィールド株式会社(TAILOR KITAHARAは北原洋服店から移転)
 

First Reach:
そのような背景があったのですね。2006年から数えると約16年が経つわけですが、これまでの事業状況はいかがでしょうか?
 

2. テーラー事業の課題について

テーラー事業の課題について

北原氏:
弊社ではテーラー業界の中でも、ブライダル(結婚式)リフォームに特化し、挙式後もスーツとして着られるタキシードとして差別化を図り、存在感を示してきました。そんな中コロナが発生したことで、ブライダル関連のオーダーが減ってしまうという困難に直面してしまいました。

それと弊社の顧客層は、よく人前に立つ機会が多く、ちゃんとした身だしなみが求められる役員やマネージャークラスの方々が多いのですが、コロナによる在宅勤務が一般化したことで、彼らからの需要も減ってきている状況です。

弊社ではマーケティング調査を基に、5ヵ年事業計画を立てているのですが、当業界の成熟度を考えると、このままではこれ以上の成長は見込めないと思っています。
 

テーラーキタハラのブライダル(結婚式)リフォーム
 

3. 新たな事業戦略について

新たな事業戦略につて|PEAK HUNT

➤  オフィシャルサイト PEAK HUNT

First Reach:
そうだったんですね。コロナの影響によって、問題が顕在化したということですね。その現状の課題に対して、今後の事業戦略はどのように考えているのでしょうか?
  

テーラー × アウトドア用品

北原氏:
これまで培ってきた生地選びの審美眼やベトナムにある自社工場の縫製技術、そして自分の趣味であることも相まって、機能性を備えた登山グッズやキャンプ用品の開発に力を注いでいます。

もちろんこれまで築き上げてきたテーラー事業を軸に、これからはアウトドア用品という軸も確立していけたらと考えています。

First Reach:
テーラー × アウトドア用品というのは、ポジショニングという点でもおもしろいですね!この組み合わせによって、どんな訴求点を持つ製品が出来上がったのでしょうか?
  

「耐久性」「防水」「軽さ」の追求

バックパック(アタックザック)PEAK HUNT

北原氏:
ブランド名は「PEAK HUNT」と名付け、バックパック(アタックザック)、サコッシュバッグ、2WAYサコッシュバッグの3種類のアイテムを扱っております。これらの特徴は「耐久性」「防水」「軽さ」にあります。

例えば、耐久性に関しては、最近テント、ザック、ウェアなどに積極的に採用されている格子柄のリップストップ生地(コーデュラナイロン)を採用しています。

軽量ながら高強度の優れた素材で、破れたりほつれたりしにくく高い耐久性があります。万が一生地が裂けても、縫い目で抑制されるようになっています。

次にコーデュラナイロン生地には特殊な防水加工を施してあり、傘の4倍の耐水性(耐水圧は約2000mm)を兼ね備えています。

細部にもこだわっており、止水ファスナーを使用しています。ですから突然の雨でも防水加工されているため、収納物である大切な衣類やバッテリーなどの電子機器が濡れることを防いでくれます。

最後にコーデュラナイロン生地の使用、そして装備品を極限にまでミニマル化したことで、本体重量約260gと軽量化を実現しています。登山やハイキングにおいて、重量は徐々に足腰の負担を増やすので、この軽量化はとても大切なことでした。

First Reach:
非常に魅力的な商品であることが伝わってきます。Amazon販売サイトも拝見しましたが、どの商品も高いレビューも得ており、在庫切れの状態でした。既に人気を博しているようですね!
  

 

テーラーとしてこだわりもチラリ

かんぬき

First Reach:
もう少し掘り下げて聞きたいのですが、商品の製作にテーラーならではのこだわりポイントがあれば、ぜひ教えて頂きたいのですが。

北原氏:
一般的にトラウザーのヨコポケットの一番下部分には、補強目的でかんぬき止めが行われています。このかんぬき止めを使って、テーラーならではの個性を登山グッズにも表現していきます。

First Reach:
テーラーならではのこだわりが詰まった登山グッズってなかなか無いですよね。分かる人には分かる、これが通な楽しみ方ってやつですね。
 

4. 今後の展望について

今後の展望について|テーラーキタハラ

First Reach:
今後はこのアウトドア用品販売事業を、どのようにしていきたいと考えていますか?
 

ブランドPEAK HUNTのグローバル展開

北原氏:
これからは日本市場だけでなく、自社工場のあるベトナムやアメリカ・イギリスでも広めていきたいと思っていて、ベトナムでは登山グッズと言えば、「PEAK HUNT」だよねと言われるようになりたいです。

というのもベトナム北部には、いくつもの有名な山が存在するのですが、まだまだ登山に関する基礎知識が乏しい利用者が多く、事故や環境への影響が危惧されています。

それらに対して、私はアウトドア用品の販売を通して登山リテラシーを高めていくのが目標です。
 

5. 経営者としてのやりがいやマインドセット

登山中の北原氏とPEAKHUNT(ピークハント)のバックパック20L

登山中の北原氏とPEAKHUNT(ピークハント)のバックパック20L

First Reach:
最後に「経営者をやっていて良かったこと」「経営者として必要なマインドセット」についてお聞かせください。
  

代えがたい達成感を味わえる

北原氏:
経営者をやっていて良かったことは、「成功した時の達成感」でしょうか。

これは山登りと同じで、山を登っている時って非常に辛くて、はたから見たら何しているんだろうと思われるかもしれません。しかし、頂上に着いた時の達成感や感動というのは、その場所に立った人しか味わうことが出来ない特別なものがあるのです。

経営者も同じで、自分が責任を持って会社の舵取りをしなければなりません。だからものすごく孤独で大変です。ただし上手く行った時の感動は、何事にも代えがたいものがあります。

経営者としての必要なマインドセットですか。絶対にあきらめない事だと思います。失敗しても失敗と思わなければ失敗ではないので、成功するまであきらめない事に尽きると思います。

First Reach:
大変貴重なお言葉ありがとうございます。最後にもう一つだけ教えて下さい。これから個人事業や経営者になりたいと考えている人に、一言送るとしたらどんな言葉ですか?
  

リスクが小さければ挑戦しよう

北原氏:
これは私の恩師から教えられた言葉ですが「リスクが小さければ、どんどん挑戦する」こと。小さい失敗というのは、次につながる経験値になります。ただし大きな致命傷は絶対に避けるようリスクヘッジも必要です。

それでもためらっているなら、ためらっている理由を明確にして解決できるかどうか考えていくことが必要だと思います。

First Reach:
私自身も北原様より頂戴したアドバイスに従って、自らの事業に活かしていきたいと思います。

本日はお忙しい時期にもかかわらず、お付き合い頂き誠にありがとうございました。
 

TAILOR KITAHARAを運営するノースフィールド株式会社の代表取締役、北原信太郎氏

会社概要

社名:ノースフィールド株式会社
屋号:TAILOR KITAHARA (テーラーキタハラ)
本店:〒171-0052 東京都豊島区南長崎1-2-4
代表者:北原 信太郎
事業内容:オーダーメイドスーツ(メンズ&レディース)、オーダーメイドシャツ(メンズ&レディース)
定休日:水・木曜定休(お問合せは年末年始以外無休)
公式サイト:https://tailor-kitahara.co.jp/

経営理念

関わった人達を笑顔にする

Philosophy(哲学)

服装を通して心を豊かにする

Awards(賞)

  • 第24回全日本紳士服技術コンクール 審査管理委員証 習得
  • 第27回全日本注文紳士服技術コンクール大会会長賞受賞
  • 全日本洋服協同組合連合会 文化章受章

History(歴史)

1935年1月 東京都京橋区にて創業
1946年5月 長野県飯田市追手町にて再開業
1948年5月 東京都豊島区椎名町に移転
1955年3月 東京都練馬区貫井にて支店開設
1958年4月 東京都豊島区椎名町で法人設立
1979年5月 全日本洋服商工協同組合副理事就任
1981年5月 服装文化功労賞受賞
2006年7月 ノースフィールド株式会社の設立、TAILOR KITAHARAの屋号を北原洋服店より移管

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