貯金と投資はどちらが得か?ビジネスパーソンのための徹底比較

貯金と投資はどちらが得か?ビジネスパーソンのための徹底比較

資産形成には「貯蓄」と「投資」の2つの方法があります。貯金(預貯金)とは、お金を銀行口座や定期預金に蓄えておくことで、元本が保証されやすい形態です。

一方、投資とは、株式や投資信託などに資金を充てて将来の利益をねらうことであり、リスクを伴います。つまり、貯金はお金を「蓄える」行為、投資はお金を「運用して増やす」行為といえます。
 

貯金のメリット・デメリット

メリット

安全性と流動性の高さ。 貯金は預金保険制度により、万一銀行が破綻しても預金1,000万円まで+利息分が保護されます。また、いつでも現金化できる流動性が高い点も特徴です。預けた元本は減ることがない(元本保証)ので、心理的にも安心感があります
 

デメリット

利息の低さとインフレリスク。 現在の日本では普通預金金利は1%未満と非常に低く、ほとんど資産を増やせません。また、物価上昇(インフレ)が進むと、預金の実質的な価値が目減りする可能性があります

例えば、物価が年2%上昇すると、5年後には100万円の実質価値が約90万円に下がるとされています。貯金だけではインフレに対応しきれないリスクがあります。
 

投資のメリット・デメリット

メリット

高いリターンの可能性と税制優遇。 投資は経済成長や企業業績の向上に伴う株価上昇や配当が期待でき、預金以上の収益を得られる可能性があります

さらに、投資益は複利の力により効率的に増やせます。また、NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用すれば、投資による利益にかかる税負担を軽減できます
 

デメリット

元本割れリスクや流動性の低さ。 投資は価格変動の影響を受け、投資金額を下回る損失が発生することがあります。特に短期的には株価変動や市場リスクに注意が必要です。

また、不動産や一部の債券などの商品は売却に時間がかかる場合もあります。さらに、効果的な運用には金融知識や経験が求められ、初心者にはハードルがあります。
 

利率・リスク・流動性・安全性・心理的影響の比較

資産運用においては、リスクとリターンがトレードオフの関係にあります。下図は主要な資産の期待リターンとリスク(標準偏差)を示したものです。

リスクの小さい資産(国内債券など)はリターンも小さく、リスクの大きい資産(株式など)は高いリターンが期待できます。貯金(現金・預金)はリスクが極めて低い一方、期待リターンもほぼゼロに近いことを示唆しています。

グラフの通り、リスクが高い資産ほど期待リターンが高くなる傾向があります。

以下、項目ごとに比較します。

  • 金利(利回り)
    貯金金利は極めて低い(現在は0%台)。一方、投資(株式や投信)の期待リターンは数%以上も見込めます。ただし市場次第で変動します。

  • リスク
    貯金は元本割れリスクがほぼない反面、投資は株価下落などで損失を被るリスクがあります。一般に利回りが高いほどリスクも大きくなります。

  • 流動性
    貯金はいつでも引き出し可能で流動性が高い。投資は商品によりますが、株式や投信は比較的流動性があります。反対に不動産や一部の債券は換金に時間を要します。

  • 安全性
    貯金は預金保険で1,000万円まで保証されるなど安全性が高い。投資は元本保証がなく、運用の損失は自己責任になります。

  • 心理的影響
    貯金は「減ることがない安心感」がメリットですが利息が少ないというデメリットがあります。一方、投資には「増える可能性」というメリットがありますが、「減るかもしれない」という不安が伴います。多くの人は安全性重視の預貯金に安心感を感じ、リスクのある投資には慎重になる傾向があります。
     

日本の税制優遇制度:NISA・つみたてNISAなど

日本には個人の資産形成を支援する税制優遇制度があります。NISA(少額投資非課税制度)では、通常約20%かかる株式・投資信託の売却益・配当税が非課税となります

投資枠や非課税期間は制度により異なりますが、2024年からは非課税保有期間の無期限化や年間投資枠の拡大(最大360万円/年)が実現しました。

つみたてNISAは長期・積立投資向けの制度で、年間投資上限40万円、最長20年間の運用益が非課税となります。つみたてNISAの対象商品は金融庁の厳格な要件を満たした株式投信・ETFに限定されており、初心者でも安心して少額から始められる仕組みです

また、iDeCo(個人型確定拠出年金)も活用すれば、掛金が全額所得控除されるなど、老後資金形成を効率化できます(制度の詳細は金融庁資料参照)。これらを活用することで、投資による資産増加の恩恵を手取りで受けやすくなります。
 

目的別の使い分け:短期資金 vs 長期資産形成

資金の目的や期間に応じて、貯金と投資を使い分けることが重要です。一般に、短期的に必要となる資金(例えば生活費の予備や急な出費)は、流動性が高く元本保証される預貯金や定期預金で確保します。

逆に、長期的な資産形成(教育資金、老後資金など)には、投資を組み合わせるほうが効率的です。例えば、教育費や住宅購入資金は当初は投資信託やNISAでコツコツ積立て、目標年数の直前には一部を売却して預金に移す方法が考えられます。

具体的には、短期の目標には元本保証型の貯金や学資保険、中期~長期ではつみたてNISAやiDeCoを活用します。

例えば、あるファイナンシャルプランナー(FP)は「短期目標には安全性の高い預貯金を用い、子どもの教育資金には預金に加えてNISAなども検討し、老後資金にはNISAやiDeCoでリスク分散しながら複利効果を狙う」と提言しています。

目標時期が近づいたら、リスクの高い運用から安全性の高い預金へ切り替える「階段的な資産移動」も有効です
 

金利・インフレを踏まえた将来価値のシミュレーション

資産の将来価値を考える上では、金利(利回り)とインフレ率の両方を意識する必要があります。前述の通り、日本での預金金利はほぼゼロのため、実質的にはインフレに負けて資産価値が減少するリスクがあります。

実際、野村アセットマネジメント社によれば物価上昇率2%であれば5年後に100万円は実質約90万円相当まで目減りします。つまり、金利以上に物価上昇が進むと、貯金の実質価値は年々下がっていくことになります。

一方、投資なら複利での運用効果によりインフレ以上のリターンが期待できる場合があります。例えば、毎月4万円を10年間積立てた場合を試算すると、金利0%の貯金では合計で480万円にしかなりません。

一方、年3%の利回りで運用すると約559万円、年5%なら約617万円に増える計算になります(下表参照)。この例では投資により約80~130万円の上乗せ効果が得られており、複利効果の大きさがわかります。
 

シミュレーション

(例:毎月4万円を10年間積立てた場合)
 

ライフステージ・リスク許容度に応じた判断

貯金と投資のどちらを重視するかは、個人のライフステージやリスク許容度によっても異なります。一般的に、年齢が若く投資期間が長いほどリスクを取って投資に回せる余裕があります。

逆にリタイアが近づくほど、保有資産の安全確保が重要になります。例えば子どもの教育資金を準備する40歳前後では、投資信託でコツコツ増やしつつ、受取時期(大学入学など)が近づいたら預金に切り替えるといった対応が考えられます

また、自身のリスク許容度(どの程度値下がりに耐えられるか)を踏まえることも大切です。不安を強く感じる人は預金や保険、債券の比率を高めにし、リターンを追いたい人は株式の比率を上げるといったアセット配分を検討します。

FPなど専門家は「定期的な見直しと目標年数に応じたシフト」を勧めています。リスクを取り過ぎず、自分の許容度と目標に合ったバランスを保つことが安心につながります。
 

まとめ:併用・少額からコツコツ学ぶ

最終的には、貯金と投資は併用して資産形成を行うのが賢明です。一方に偏ることなく、必要な安全資金は預金で確保しつつ、余裕資金は長期的に投資に回して増やすイメージです。「小さく始めて学びながら成長する」姿勢が大切です。

たとえば最初は少額の積立投資から始め、慣れてきたら枠を広げていくことで経験を積むことができます。貯蓄と投資にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、組み合わせることでリスクとリターンのバランスを取り、安心感を持って資産形成に取り組めます。
 

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や投資行動を推奨するものではありません。記事内容の正確性や将来の成果を保証するものではなく、本記事を参考にして行われた投資・貯蓄その他の判断によって生じたいかなる損失や損害についても、当サイトは一切の責任を負いかねます。実際の資産運用に際しては、ご自身の判断と責任において行っていただくとともに、必要に応じて専門家へご相談ください。

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