誰も知らない最高級スモールクロコダイルの原皮価格

誰も知らない最高級スモールクロコダイルの原皮価格

世界の有名ブランドがこぞって使用する、スモールクロコダイル革(別称:イリエワニまたはポロサス)。世界中でたくさんの愛好家がいることもあり、市場での販売価格も非常に高値で取引されています。

ですから、なんとなくでスモールクロコはもちろん希少価値が高いのだろうとお考えになるかもしれません。しかし、スモールクロコは、タイ産シャムワニ原皮の約124%も日本に輸入されており、加えて約39%も安価であるのです。
 

 Contents

  1. スモールクロコダイルの原産国
  2. クロコダイル原皮の取引量・額
  3. 何故スモールクロコの販売価格は高いのか?
  4. 本当に希少性の高いクロコダイルは?

1. スモールクロコダイルの原産国

スモールクロコダイルの原産国

ここで質問です。皆さんはスモールクロコダイルの原産国はご存じでしょうか?

原産国はパプアニューギニアやオーストラリア、そしてインドネシアであることが一般的です。生産量の90%以上が養殖です。

ちなみに、同じく人気のナイルクロコダイルは、南アフリカやジンバブエで養殖されています。
 

スモールクロコダイル(イリエワニ)

スモールクロコダイル(イリエワニ)

画像引用先:Wikipedia, the free encyclopedia

生息地:
生息エリアは、オーストラリアやパプアニューギニア、そしてインドネシア。

イリエワニと呼ばれることから分かるように、淡水と海水が混じる汽水地域の入江や、三角州のマングローブ林などに生息。

サイズ:
現在生存するワニ種の中で、最大級のサイズ。成体雄は、約6.0 – 7.0m、体重約1,000-1,300㎏。

一方で、成体雌は、約4.0 – 5.0mと成体雄と比べると小ぶりになります。

特徴:
ワニ種の中でも、かなり攻撃的な性質を持ち、なんとアゴの噛む力が、約2トンと最大級。大きな個体だと、人や家畜にも危険を及ぼします。

皮革:
主に養殖されたクロコダイルの革で、学名ポロサスの名前でも有名です。クロコダイル革の中でも、最高級と称される種類。

スモールクロコダイルという名前からも想像つくように、クロコダイル種の中でも、細かい長方形の鱗が美麗に揃っているのが特徴です。横腹の腑は丸みを帯びています。

用途:
バッグや高級衣服、小物類。
  

2. クロコダイル原皮の取引量・額

クロコダイル原皮の取引量・額

クロコダイル原皮のHSコード

一般的に原皮とは、なめし加工する前の塩漬けにされたクロコダイルの皮のことを言います。日本で革製品を製作する日系企業は、基本的になめし加工前の原皮を購入しています。

では早速、日本へ輸入されるクロコダイルの原皮の価格と量を確認する為に、HSコードを確認します。HSコードとは、税関管理局がモノの税率管理をしやすくするために、全ての輸出入物に付与する記号のことを言います。

ですから日本に輸入されるクロコダイルの原皮にもHSコードが付与されています。この度、日本関税協会から公開されている「WEBタリフ」を使って、クロコダイル原皮のHSコードを調べます。

その結果、クロコダイル原皮のHSコードは「4103.20.011」であることが分かりました


webタリフ (kanzei.or.jp)

財務省の貿易統計結果

先ほど調べたHSコードを使い、財務省貿易統計で算出した結果が下のグラフです。

日本へのクロコダイル原皮の輸入量

対象月:2021年1月~10月
 

オセアニア・アフリカ諸国からの輸入量が断トツに多い

ナイルクロコダイルの産地である南アフリカが26.1トンと、2位に圧倒的差をつけて輸入していることが分かりました。

次いで、スモールクロコダイルの主要産地であるパプアニューギニアが、輸入量11.7トンで2位につけていることが分かりました。

スモールクロコの産地であるパプアニューギニアと、シャムワニの産地であるタイの原皮輸入量 (9.4トン) を比較すると、124%も多く輸入されていることが分かります。

つまりシャムワニの原皮よりも、多くのナイルクロコダイルとスモールクロコダイルの原皮が日本へ輸入されているのです。
 

オセアニア・アフリカ諸国からの輸入単価が圧倒的に安い  

輸入単価においても、スモールクロコダイル原皮の産地であるパプアニューギニアからは7,300円/KGであることが分かりました。ナイルクロコダイルの主要産地であるジンバブエからは、5,000円/KGで日本に輸入されています。

パプアニューギニアとタイの原皮輸入額 (11,800円/KG) を比較すると、39%も安価であることが判明しました。

つまりシャムワニの原皮よりも、ナイルクロコダイルとスモールクロコダイルの原皮のほうが日本へ安く輸入されているのです。

補足資料

国際自然保護連合IUCNグループの一つであるCSGの記事にも、ポロサス原皮(Crocodylus porosus)がシャムワニ原皮(Crocodylus siamensis)よりも多く取引されていることがわかります。
 

3. 何故スモールクロコの販売価格は高いのか?

何故スモールクロコの販売価格は高いのか?

スモールクロコダイルだけでなく、ナイルクロコダイルの原皮価格が安価であることが分かりました。それと同時に、皆さんはある疑問が湧いてこないでしょうか?
 

何故、スモールクロコの販売価格は高いのか?

 
私が考える理由は、以下の二つです。
 

  1. 輸入された原皮から傷のない皮だけを使用する為。

  2. 日本の人件費コストが高い為。
      

1.において、日本のメーカー様のウェブサイトを調べると、「当社ではプロが選んだ原皮のみを使用しています」などのうたい文句を見ます。言い換えれば、使用できない原皮コストを使用できる原皮のコストに上乗せしているのではないかと推測します。

そうでなければ、使用できない原皮のコストを自社で負担することになり、会社がつぶれてしまいかねません。

2. に関しては、言わずもがな、日本の職人さんの人件費が高いからと推測できます。

日本の人件費はタイの3倍ともいわれていますから、アフリカ諸国やパプアニューギニアの人件費と比べたら、5倍もしくはそれ以上になるのではないかと思います。
 

4. 本当に希少性の高いクロコダイルは?

本当に希少性の高いクロコは?

コトバンクによると、希少性とは「資源やそれから作られる財やサービスの供給が人の欲望(需要)に対して相対的に少ない時、そのモノの価値が高騰、または高いと思う心理的な現象のこと。」とあります。

つまり、「日本に輸入される量が少ない」かつ「輸入単価が高い」という条件を満たす国で、生産されているクロコダイル原皮の希少性が高いと仮説を立てることができます。

改めて先ほどの統計データを見ていきます。縦軸を輸入単価、横軸を輸入量にしてバブルチャートを作成しました。

希少性が高いのは、量が少なく単価が高い物ですから、左上に位置している生産国の原皮ということになります。
 

アメリカ合衆国やマレーシア、ザンビア、そしてタイが該当


これまでなんとなくクロコダイル革と言えば、スモールクロコダイル(イリエワニまたはポロサス)と考えていらっしゃった方も多いのではないでしょうか?

もちろん原皮の「輸入単価」と「輸入量」だけが、最終商品の価値を決めるわけではありません。しかしながら原皮の価格は、最終商品の価値を決める上でも非常に大切なパートになるのも事実です。

ぜひクロコダイル革プロダクトをご検討される、一つの判断材料になれば幸いです。

 関連記事 

Journal/Diary に戻る

1件のコメント

コメントでもご存じの通りポロサスは気性が荒く、一つの空間で生育すると喧嘩傷だらけになってしまう為、ある程度の大きさからは一頭一頭を区分けして育てています。
最後まで大きな生簀で一度に育てているシャムワニとの価格差は養殖工程の手間の差が大きく関係しています。

為替貧乏

コメントを残す