日本では、リタイア目前の世代で「貯蓄ゼロ」の世帯が増えており、60~70代二人世帯の約2割は金融資産を全く保有していないと報告されています。これは、40~60代にも将来の不安を抱える要因となっています。
多くの人が「何となく収入が少ないから」「浪費癖があるから」と感じますが、実際には行動経済学の知見に基づく心理的・習慣的な原因や家計管理の不足が深く関わっています。本記事では、貯金が増えない典型的な10の行動パターンとその改善策について解説します。
1. 支出を把握せず無計画にお金を使う
家計簿をつけないなどして、何にいくら使ったか把握していない人は多く、お金が貯まりにくい傾向があります。収入だけ確認して支出を管理できていないと、無意識に浪費が膨らみ家計のムダに気づけません。例えば、クレジットカードの明細を見ない、各種サブスクや食費をチェックしないといった行動です。
改善策
支出を「固定費」「食費」「交際費」などに分け、家計簿アプリやノートで記録しましょう。紙でもアプリでも構いません。大事なのは合計金額ではなく、何にいくら使っているか「見える化」することです。
2. 残ったお金を貯金しようとする
給与から使うお金を逆算せず、月末に「残った分を貯金しよう」と考えるパターンがあります。しかし人には「もらったものは余すことなく使い切る」習性(パーキンソンの法則)があり、結局手元の金はすべて消費に回ってしまいがちです。つまり「余ったら貯める」方法では、人間の消費欲が勝って貯まらないのです。
改善策
給与天引きや自動送金などで、あらかじめ決まった金額を貯蓄用口座に移し(先取り貯金)残りの金額で生活する仕組みを作りましょう。例えば毎月手取りの1~3割を目安に先に貯金用口座へ移し、残金で生活すると、無意識の浪費を防げます。
3. ボーナスで衝動的に高額消費する
夏冬のボーナスで「高級家電や時計、旅行など」をつい買ってしまう習慣は典型的です。日頃手が出せないものにお金を使いたくなるのは自然ですが、その分貯金から減ってしまい、次のボーナスまでまた貯まらなくなります。また、ボーナス月は交際費や食費も増えがちです。
改善策
ボーナスで使うお金を事前に計算しておき、使途・上限金額を書き出しましょう。例えば「子どもの教育費○万円」「家族旅行△万円」など必要支出を先に確保し、残りを貯金へ。大物買いは計画的に行い、ボーナスのほとんどは定期預金や投資に回すと資産が増えやすくなります。
4. 外食や飲み会が多い
会社や友人との外食・飲み会が続くと、1回あたり数千円かかり、月間の食費が数万円アップします。週に何度も外食すると、毎週一度の外食でも月4回で数万円の支出増です。楽しみながら無駄遣いしている感覚が薄いため、知らず知らず支出がかさんでしまいます。
改善策
会社の付き合いや飲み会は必要最低限にとどめつつ、自炊や節約術(まとめ買い・常備菜作り)を活用しましょう。外食する際も予算を決め、「月〇回まで」などルールを設定すると効果的です。家族との食事は献立と食材費を前もって計算し、無駄な追加注文を減らす意識も大切です。
5. 衝動買いや「ついで買い」に弱い
レジ前のつまみ買いやコンビニでの小額衝動買いも、積み重なると大きなムダになります。特に毎日のように小さな買い物をしている人は、お菓子や飲み物など「消える出費」が多く、後で必要ない物を買ったり捨てたりしてしまいがちです。いくら金額が少なくても、不要なものに手を出す習慣は貯蓄の敵です。
改善策
衝動買いを防ぐため、買い物リストを作り必要な物以外は買わないルールにしましょう。ポイント付与やセールによる「得した気分」に流されないよう、使い切り予算を決めて管理するとよいでしょう。また、財布やカードの持ち歩きを減らす(家計用と娯楽用でカードを分ける)など、購買行動に「ひと手間」を加えて衝動を抑える工夫も有効です。
6. ローン・リボ払いなどの借金依存
高額商品を分割払い(特にリボ払い)で購入すると、一見支払いが楽ですが利息が膨らみ貯金どころではなくなります。リボ払いは毎月一定額だけ返済するため返済が長期化し、同時に新たな借金も増えやすい「借金地獄」状態に陥りがちです。車のローンやキャッシングも、完済まで多額の金利を払い続けることになり、手元資金が減って貯金が難しくなります。
改善策
借金・ローンは原則避け、どうしても利用する際は低金利の一括ローンを選びましょう。特にリボ払いは「利用するほど返済額が積み重なる」と明言されていますので、使わないのが賢明です。返済中のローンは繰上返済で元本を減らす、借り換えによる金利軽減なども検討しましょう。
7. 貯める目的や目標を定めていない
「いつか貯めたい」と漠然と思っていても具体的な目標や期間がなければ、モチベーションは続きません。実際、貯金できない人の多くは「何のためにいくら貯めるか」を明確にしていません。
目標があれば「旅行資金100万円を1年で貯めるには毎月8-9万円貯める必要がある」と逆算でき、先取り貯金の計画も立てやすくなります。目標がないと「使わずに貯める」構えが甘くなりがちで、先述のパーキンソンの法則に敗れます。
改善策
明確な貯蓄目標(マイカー購入、教育資金、旅行資金、老後資金など)と達成年月を設定しましょう。目標額と期限が決まれば、必要貯金額を計算しやすくなります。毎月〇万円ずつ貯金する「貯金プラン」を立てて、給与日には先取り貯金口座へ確実に回す習慣をつけることが大切です。
8. 固定費の見直しをしない
住居費、スマホや保険などの固定費は生活の中でも大きな支出源ですが、意外と見直しが後回しになりがちです。しかし固定費は一度削減すればその効果が長く続くため、貯蓄を増やす近道になります。
家賃や光熱費、通信費、各種サブスクなどは定期的にプラン見直しや乗り換えを検討しましょう。例えばスマホキャリアを格安SIMに変えれば年間数万円の節約になりますし、不要な保険や会員サービスを解約して固定出費を減らせます。
改善策
固定費の「格安化」を進めます。具体的には、通信費(格安SIMへの移行)、保険料や定期購読の見直し、住宅ローンの借り換え検討などです。また、毎月同じように引き落とされるサブスク類は、今本当に必要か定期的にチェックしましょう。一度見直せば、常に家計に余剰分を生み出し続けられます。
9. 夫婦間で財布が別々(家計連携不足)
共働き夫婦で、それぞれ別に財布や口座管理をしているケースがあります。一見公平に見えますが、この方法は浪費を招きやすい典型例です。
お互いが「自分の分は好きに使える」となるため、必要以上に散財してしまい、同時に「貯金は相手がしているだろう」と安心して貯められなくなるのです。実際、貯まる家計では配偶者のどちらかが家計全体を把握し、全収入・支出を管理しています。
改善策
夫婦の収支を共有し、家計を一元管理しましょう。一方が家計の「財布を握る」形で、収入や支出を協力して把握すればムダ遣いが減ります。
夫婦で固定費や貯蓄目標を話し合い、共同の口座に予算を集約する方法がおすすめです。そうすれば「相手が貯めているだろう」という錯覚もなくなり、二馬力で貯金が加速します。
10. 金融リテラシーの不足で資産運用をしない
多くの人は貯金を銀行口座に寝かせたままにしており、将来的なインフレや老後資金の不足リスクを見落としがちです。実際、調査では日本の働き盛り世代の約6割が「投資・金融商品の知識はほとんどない」と答えています。
このような金融リテラシーの低さは、低利の預貯金に頼ったまま浪費を減らさない原因にもなります。資産運用の基本を知らないと、長期的に資産を増やせません。
改善策
本やセミナーで投資・貯蓄の基本を学びましょう。まずはiDeCoやNISAなど税制優遇制度の活用から始め、貯蓄用・投資用など目的別に口座を分けると管理が楽になります。少額からでも投信積立などに回してみれば、金融リテラシーが自然に高まり「お金がお金を生む」実感が得られます。
結語:変化の第一歩を踏み出そう
ここまで挙げたパターンはいずれも、多くの人に当てはまる「貯まらない家計」の特徴です。大切なのは、どれか一つでも当てはまる項目から改善を始めることです。
たとえば、まずは現在の収支を把握するために家計簿をつける、目標を一つ定めて先取り貯金の習慣をつける、といった小さな一歩でも効果は大きいでしょう。下記のような簡単なステップから始めてみてください。
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家計の現状把握:家計簿アプリやエクセルで1か月分の収支を記録し、使い道を明確にする。
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固定費の節約:通信費や保険料など見直せる固定費を洗い出し、節約プランを試算する。
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目標設定:旅行や退職金など具体的な貯金目標を決め、必要な月額貯金額を逆算して先取り貯金を始める。
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小さな節約習慣:まずは外食の回数を減らしたり、衝動買いを控える意識を持つ。1週間の予算を決めてやりくりしてみる。
これらの一歩を積み重ねることで、家計の無駄が減り、着実に貯金体質に近づけます。行動経済学でいうところの「仕組み化」の考え方を活かし、無理なく先取り貯金や費目管理を習慣にしましょう。
重要なのは継続することです。まずは自分に合った小さな改善策から始め、徐々に貯蓄体質を育てていくのが成功への近道です。
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